おじいちゃんの折り紙

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おじいちゃんの折り紙

 頼羅(らいら)がまだ紙おむつをしていた頃、祖母も母も父も見当たらず、泣きじゃくる頼羅をもてあました祖父が、文箱に大切そうに仕舞われていた折り紙を出してくれた。頼羅がなめたり、引きちぎろうとしても破れない。固いと思えば柔らかく、簡単に折れて、広げると、折れた後も残らず元に戻る。  頼羅の手のぬくもりでほんのりと明るく光る折り紙で、祖父は鶴を折って見せてくれた。鶴はふわりとうきあがり、頼羅の周りをパタパタと舞った。 「ああ、頼羅のお手手があったかいから、またこの折り紙が光ったねえ」  祖父の言葉を聞きながら、舞っている鶴を眺めて、頼羅が不思議そうにしていると、光を失った折り紙がぱたりと縁側に落ちた。祖父がそれを手にしても、折り紙が光る事は無かった。  持ってご覧、と、祖父に手わたされた折り鶴は、頼羅の体温に反応するように光を取り戻して、再び、頼羅の頭上をふわふわと舞った。
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