1人が本棚に入れています
本棚に追加
蒼の花 雨の街にて
誰もいない街、繁栄の跡、其処には忘れ去られた者達が集うと云う。
かつての温もりを忘れられぬ者、戦火の傷に心を痛めた者、記憶に遺らなかった者……。
そして、全てを忘れ、何かを待ち続ける者。
その街には、何時も雨が降っていた。朝、昼、夕、自重を知らずポツポツと降る。かつて、水溜りを踏んだ長靴の音は消え去り、冷たい雨模様がずっと続いている。
私は待っている。
雨に流されたかつての想い、それの終着点を。
しかし、待ち続けても答えはいつになっても返ってこない。きっとこの街はいつまでも止まったままなのだ。
雨が止まないこの街で、私は初めて待つのをやめた。
最初のコメントを投稿しよう!