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それは青い光を放つ靴の足跡だった。
丁度私の靴の大きさと同じで、私の足に重なるようにして存在していた。
辿ればカウンターの扉に繋がっているらしく、どうにも導かれているようだ。
私は足跡を辿る。
扉の外は先程と同じ、雨の降る外。聞き慣れた音のする街の中だ。
万年雨が止まぬせいで舗装が荒れてはいるが、未だ景観を崩さぬ灰色の街だ。
そういえば、私は何を待っていたのだろうか。自らの人生か、それとも隣人か。
考え込む私に対し、足跡は待ってくれない。
ただ足跡辿れば何かが分かる。そう漠然としたものだが、信じてもいいような気がしたのだ。
足跡は確かに、一定のリズムを刻んで確かに歩んでいく。
そして
恐らくは夕暮れの刻、薄暗い空の下でとある円形広場に出た。
そこは青い花が咲き誇るレンガタイルの広場だった。円形の広場で使われていないベンチがある場所だ。
中央に大木があるのだが、そこに一人だけ待ち人がいた。
私だ。
大木にもたれかかるように座る私がいたのだ。
全身が白骨と化し、項垂れる私が。
私もまた、待っていたのだ。
先程のブティックで気になった衣服を纏い、ひたすらに私を……。
私は私に向けて、口を開いた。
「待たせたな……私よ……」
此処は忘れられた者達の街。
青い花と共に待ち、その者が忘れられた涙の雨に打たれる街だ。
秋雨の空、午後の暮れにて没す。
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