見上げた空には太陽が

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 美央(みお)は短く息をハッと吐き、大股で駆け出した。  壁に激突するぐらいの勢いで走り込むとジャンプし、左足で強く壁を蹴り、跳ね返される反動を利用して少し離れたフェンスに登る。腰を屈めて両手を突き、身体をバネのように弾ませて、更に高い別のフェンスへ飛び移る。手を使わずに側転しながら反対側へと降り、そのままの勢いで軽く飛び込み前転する。  Parkour(パルクール)は芸術性とエンターテイメント性の高いパフォーマンスだ。走る、飛ぶ、登るといった移動に重点を置きつつ、それをいかにしてかっこよく、華麗に見せるかを競う。同じ壁、同じフェンス、同じ障害物でも、ルートは決まっておらず、どう超えていくのかは各自に委ねられる。  そこにあるのは『個』であり、『自由』だ。  Parkourは美央にとって、『自分』であることを主張する表現手段だった。
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