見上げた空には太陽が

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 ぼんやりと重たい瞼を開けると、違和感を感じる程白い天井が視界に映る。眩しすぎる白に目がチカチカし、瞼を閉じてからゆっくりともう一度目を開いていく。 「お、気がついたな」 「兄貴」  黒髪の短髪に日に焼けた肌、彫りの深い顔立ちをした太陽という名前そのものの兄が、美央の顔を覗き込んでいた。 「お前、あの事故から10日間も意識が朦朧としてたんだぞ」 「あの、事故……」  落下した時の記憶が急激に蘇ってきた。 「覚えて、るか?」 「う、ん。ジャンプしたら突風が吹いてきて、向こう側のビルに足を掛けようとしたけどバランス崩して……落ちていく中、最後に覚えてるのは遠くなってく青空、だけ」  太陽の肩越しにあの日と同じ青空がガラス窓に映り込んでいて、ゾクゾクっと背筋に寒気が走った。 「兄貴、カーテン閉めて!!」 「どうしてだ?」 「見たくないっ。恐い……恐い……」  ガチャッと扉が開く音がした。仕切りとなるカーテンのせいで、誰が入ってきたかは分からない。
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