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プロット 後半
〇『家族』『君都章』の小説。二人にとって自己を見つめ直す世界。モトヤはキャラを含めた人々の心情を。イチノは物語から他者との関わりを得る糧を。
君都章の小説を在るべき形に戻した二人は、再び混沌の千羽市へ。足は自然と病院へ。それはこの千羽市の物語を書いている『現実のシオリ』の誘導。真実を知って向き合う二人に、演出は必要ない。
〇現実のシオリ、『舞濱栞(まいはましおり)』は余命を宣告された十五才の少女。死ぬ前に物語を書いてみたいと思い、設定とキャラクターを練り始めた。
『神さまは世界を造り始めて、七日目は休んだという。けど、神さまは休んだのではなく、私と同じように病気で死んでしまったのだ。なんとか生まれ変わったけど、その街では七日目の日曜日が消えてしまった』
千羽市の物語が始まった時、主人公である二人の少年少女には、日曜日が無かった。
作者の分身として存在している栞が、二人に告げる。
「でもうっかり『二人が日替わりで遊んだ』エピソードをはさんじゃってね。それで千羽に日曜日が戻ってきちゃった。十年分を無理やりだから、そのせいで季節が滅茶苦茶になった」
「モトヤは分かるよね?どうすればこの千羽を救えるのか。つまらない話だったらごめんね」
〇イチノは自身をシミュレーティッドリアリティだと認識している。いざそうなってみて、恐怖を覚えていた。家族も家も、読んできた物語も、新しくできた友達も、モトヤすらも、全てが作りもので、自分にはセンテンスとしての血液しか通っていない。もっと言えば、変貌したシオリも、この悲しみも、物語上の演出に過ぎない。
だが、モトヤは物語に、舞台に、事実に、寛容だった。性格設定だと言ってしまえばそれまでだが。単純でただ、前向き。
「俺が、千羽を救おうと思えば、そうなるということ。栞は今ここで俺に救う力を与えて、幸せな結末を用意する」
ディナイと化したシオリの手を取り、戻れと強く願う。それだけで奇跡は起き、そういう物語だった。
街には平和と日曜日が訪れる。
「つまらなくなんてない。俺でも理解できんだから。素敵な物語だったよ」
〇ED
最後の行を入力した現実の栞。
「こんなセリフを言わせるなんてズルいかな?でも楽しかったし、いいか」
ふと、自分を蝕んでいた胸の痛みが和らいでいる事に気付く。
ノックの音と共に病室に現れた二人の少年少女。
それは夢か幻か……。
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