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150年後
「今までご苦労様。お休みなさい。」
そっと優しく撫でるように私に触れる指。
ゆっくりと離れて行く。
キイィッと軋む音の後、私がいる空間は闇に染まりつつ、重く鈍い音を最後に完全な暗闇へと閉じられた。ガチャガチャと鳴る金属音。
遠ざかる足音。
私は眠りについた。
再びあの人に必要とされる時が来るまで。
また、戦場に・・・。
少しばかりの湿気とカビ臭い、この暗闇の中を過ごす。長い時間を経て、ある日変化が起きた。あの時聞いたガチャガチャ鳴る金属音の後に明かりが照らされた。
私は再び必要とされた。
愛でられ、鑑賞されるために。
私を大切にしてくれる青年が私に問う。
「俺の高祖父は鉄砲隊の一人だった。もしかしたら君は一緒にいた。ひいひいじいちゃんはどんな人だったのかなぁ。」
あの人と同じように優しく撫でる指。
思い出せば、私とあの人が生きた時代は熱かった。
あの人はもういないけど私は存在している。
150年後、あの人の子孫と一緒に。
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