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「ふふ。ごめんなさいね、びっくりさせちゃって。左門さんのお知り合い?」
「あ、はいっ。幻橋庵でバイトをしている高橋小春です」
「初めまして、私は後藤幸子と申します。実家に戻ってきた時はお店にお邪魔しているのよ」
「幸子の実家である松本家の米は美味くてな。この時期に一年分受け取りに行くんだが……今日は珍しく幸子もいたので一緒に運ぶことにした。野菜はおまけに貰った」
左門さんが事情を説明してくれる。
なるほど、それでこの状態……って、納得してしまってもいいのだろうか。
私の微妙な表情で言いたい事を察してくれたのか、幸子さんが肩をすくめた。
「自分で歩くって言ったんだけどねぇ」
「以前来た時に、遠いだの足が痛いだのとぼやいていただろう。なに、ついでだ。気にするな」
荷車を引く速度を緩めることなく、振り返りもせずに左門さんが言う。
目つきも悪いし口調もぶっきらぼうな左門さんだけれど、実は面倒見がいいんだよね。
その手段は、ちょっと変わっているけれど……。
それは幸子さんも分かっているんだろう。私達は目を合わせると、小さく笑い合った。
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