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「密羽様は……アヤカシから私達を守る際に力を失ってね……こちらに来れなくなってしまったの」
「え?それはどういう…」
「アヤカシが人の世に姿を現すには、ある程度の妖力が必要でな。密羽は幸子達を守る際に力を使いすぎて弱体化してしまったのだ」
幸子さんの言葉の意味を計りかねた私に、左門さんが落ち着いた声で説明してくれる。
「……それでも、アヤカシの世で養生すればやがて妖力は戻ってくる。幸子さんは、密羽様がまた人の世に来るのを待っているんだよ」
今度は右門さんが、左門さんの説明を引き継いで教えてくれた。
小学生の頃から今までずっと……何て長い時間なんだろう。きっと、それだけ幸子さん達にとって密羽様は大切な存在なんだろう。
また出逢えたら……人の世に来てくれたらいいですねと、寂し気な瞳の幸子さんに声をかけようと思った。けれどその前に、幸子さんは窓の外へ視線を向けてしまう。
その先には私達が渡ってきた橋とは反対側にある、アヤカシの世に繋がる朱塗りの橋が見えた。
「ええ、けれど……今日で最後になるかもしれないわ」
小さな声がぽつりと落ちる。
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