私の果てに。

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ある時、街でタカユキって男に声を掛けられた。 不思議な言葉だった。 「いくら…」 その時、私は自分に値段が付く事を知った。 私はその日、タカユキに三万円で抱かれた。 三万円が高いのか安いのかなんてわからない。 けど、自分で稼いだ初めてのお金だった。 タカユキとのセックスも今までと一緒で、自分勝手なセックス。 そして出せば終わり。 そんなモノだって思ってた私にはちょうどいい。 その日以来、私はタカユキと会った場所で座って誰かを待つ。 タカユキは不思議な男で、私が座っていると毎日、私の好きなセブンアップとメロンパンを持ってやって来る。 誰に声を掛けるでもなくただ座っている私の横に座って、じっと私の事を見てる。 「お前さ、ウリやってるんじゃないんだな」 そう言って笑ってた。 スーパーに並んでいる林檎は自分から売り込まない。 その林檎を欲しいと思ったお客さんが自分から籠に入れて買って帰る。 私も同じ。 自分から売り込む事はない。 ただ毎日誰かが私に訊いてくる。 「いくら…」 って。
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