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髭を生やしたコック姿の老人が無愛想に、
「いらっしゃい」
と言って、
「お好きなところにどうぞ」
と背を向けた。
別にその態度が気に入らない訳でもない。
もうその接客には慣れている。
俺たちはいつもの窓際の席に座り、テーブルの上にタバコとオイルライターを出した。
店主である老人は俺たちのテーブルに水とおしぼり、灰皿を持ってやってくる。
「今日は天気が良くて良かったね…」
そう言って始めて笑みを見せた。
「海岸は風が少しあるけどね…」
俺は灰皿を引き寄せてタバコに火をつけた。
「今日は何にする」
俺も未和子もメニューも見ずにタンシチューとカツレツを注文した。
老人は黙って頷くとカウンターの中に戻って行った。
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