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☆彡
その学園祭を境にして涼太の目の色が変わった。傍からは人が変わったようにも見えた。
「俺はあの城西高等学校に入学したいんだ。父さん、許してくれるか」
涼太が父親に頭を下げて願うのは生涯でこれが初めてだったのかもしれない。しかし、それを父が聞き入れることはなかった。
いつものようにリビングでワインを味わう父は、いわゆる名門校への進学を拒否しただけでなく、まるっきりピアノの演奏をしなくなりリビングの音楽が失われたことにも不快感をあらわにした。父は黙ってワイングラスを置くと立ち上がり、憮然としてこういった。
「何を言ってるんだ、お前を三流の高校に進学させるわけにはいかない。しっかりと自分の進むべき将来のことを考えなさい」
しかし涼太が退くことはなかった。その決心は鉄石のように強固だった。
「父さん、どの高校に入学しようとも、俺は必ず医学部に進学するから心配しないでくれ。ただ、それまではやりたいことをやらせてもらいたいんだ。一生のうちのほんの三年間だと思って、許してほしい」
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