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さっと血の気が引く。
――昨日の麗先輩とは別人みたい。どっちが本当の顔なんだろう?
するとはるかは、にぎやかトリオの視線が自分に集中していることに気づいた。ひどく不機嫌そうな顔をしていたから良い意味ではなさそうだった。
――あたし、何か気に障るようなことしちゃったのかしら。
するとその三人はささっとはるかに接近し、はるかを囲い込んだ。そして耳元で囁く。
「花宮さあ、ちょっとこっち来てくれない」
「えっ、なんですか」
「まあまあいいから、ほら、早く!」
そして半ば強引に音楽室から連れ出された。はるかは逮捕された犯人のように左右から固められ、逃れる術はなかった。
部員たちの目の届かない、離れた廊下に連れられたところで、壁にずいっと押しやられ追い詰められる。
――ひゃあ、あたしが何したっていうの!?
それから南野はドスの効いた低い声で突っかかるようにいう。
「あんたさぁ、どういうつもりしてんのよ。一人だけ抜けがけしたでしょ」
「……抜けがけって?」
まるで心当たりのないことをいわれて困惑するはるかに向かって、南野が突然、手を上げた。
バンッ!
はるかの右頬すれすれを南野の掌が通り過ぎ、背後の壁が鈍く響いた。
――ひゃっ!?
「なにとぼけてんのよ!」
南野の声がさらに荒くなる。すると間髪入れず第二波が到来した。
ドンッ!
――ひいっ!
今度は北川の掌が左頬をかすめ壁を震わせた。はるかは二人から伸びる二本の腕に顔を挟まれて狼狽する。
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