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「しらばっくれるんじゃないわよ! あんた、この前ちょっと上手く演奏できたからって、欲が出て麗先輩に取り入ったでしょ」
西山が腕を組み凄んでいう。
「演奏技術じゃあたしたちに敵わないからって、あんたせこいんだよ!」
――うわ、あたし、この先輩たち目をつけられたみたい。怖い、どうしよう。これがマウンティングってやつかぁ。
逃げ場を失い、足がガクガクと震えてくるはるか。
誰かが気づいてくれればいいのだけれど、ツインの壁ドンは楽器の音にかき消されて誰の耳にも届いていないだろう。
「コンクールに出るのはあたしたちだからね! あんたはお呼びじゃないんだよ」
そういわれて、はるかは即座に否定する。
「あたし……コンクールに出られるほど上手いなんて思っていません。先輩たちの方が全然上手……」
するとそのか細い声は容易く遮られる。
「じゃあ、なんであんたなんかが昨日、麗先輩と一緒にいたのよ! 情報ダダ漏れなんだからね」
――あっ、やっぱり誰か見ていたんだ。
「あれは、その……あたしが麗先輩に呼び出されたわけで……」
ちらと三人に目をやると冷たい視線が突き刺さってきた。身じろぎ一つできない。串刺しにされたみたいだと思いはるかは怯える。
「じゃあ、あの麗先輩の用件って何だったのよ? あんたに用があるとは思えないけど」
本当は涼太が呼び出していたのだけれど、それをいうとさらに話がややこしくなり、そして嫉妬心が上乗せされること請け合いだから、はるかは困り果てた。
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