第一章 一冊の本

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 だから、僕がスマートフォンを弄っているのは主に検索だ。  調べる内容は大抵、 『楽して生きる人生の方法』――とか。 『これさえ読めば、今すぐあなたもお金持ちに!』――とか。  疑わしいけど、そういう楽な生き方が出来る方法だ。  人間、誰しも自ら苦労をする道を選びたくないだろう。  だからこそ、楽な人生を選びたいだろう? 求めたいだろう?  ――それは僕も例外じゃない。  僕だって苦労なんて一切せず、楽に、そして自分の望み通りな道を進みたい。  だからこうして電車の椅子に座りながら、どうすれば大学を卒業した後に楽な人生を送れるのかを検索しているんだ。  でも……流石に親の年金を頼りに生きる寄生虫みたいな生き方は嫌だな。  どうせ毎日毎日『働け、働け』って言われるんだし。  そもそも実家に帰るなんて、一年の間に数えるほどしかしていない。  だけど結局のところ、楽な人生というのはそういうものなのだろう。
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