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「うん。…またね,昴くん!」
「うん,またね。紗江ちゃん,バイバーイ」
二人は背中合わせに,右と左に別れて歩いていく。
…「またね」,だって。言っちゃった。紗江は思い出して,また赤面する。
連絡先,交換すればよかったかな。スマホ持ってたのに。
たったの三十分話しただけで,バイバイなんて。
きっと彼は,この雨の日の三十分間のことを,すぐ忘れてしまう。そして,紗江自身も。
それはごく当たり前のことだから仕方ない。悲しいことだけれど。
でも,私は覚えていたい。今日のことも,昴くんのことも。
家に向かう紗江の足は,いつしか速くなっていた。
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