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剣聖編01.プロローグ――剣聖の修行場――
01-1
鬱蒼とした竹林の中に、爽やかな風が吹き抜けていた。
青竹の匂い、そして笹の葉が奏でるサラサラという音に混じって、何かが空を切る音が流れてくる。
―― ひゅひゅっ! ひゅっ! ひゅんっ! ――
音の出所は薄暗い藪の奥。直径にしてほんの数メートルほどの開けた場所である。
そこには無数の三日月を描くように日本刀を振るい、白刃を煌めかせる一人の少女がいた。
「せいっ! やぁっ! ――りゃぁぁっ!」
とても美しい顔立ちの少女だった。
年齢は十六歳から十八歳ぐらいだろうか? 桜色の着物に紺色の袴を穿き、下ろせば腰まで届きそうな黒髪を頭の後ろでまとめている。
彼女の印象を一言で表すなら、おとぎ話の桃太郎を女の子にしたような……といった感じだろうか。
「やぁぁっ!」
長い髷のようにも見えるポニーテールをなびかせ、少女が目の前の竹に向かって刀を振り下ろす。
すると次の瞬間、男の腕ほどもありそうな太い竹が斜めに両断され、他の竹に寄りかかるようにして倒れていった。
「せい! せいっ! やぁぁっ!」
少女が槍のように鋭くなった竹の穂先へ、さらに左右から袈裟斬りを打ち込んでいく。
傍目には激しく斬りつけられているようにも見えるのに、竹はほとんど揺れていなかった。いや、それどころか刃が竹に当たったときの音すらしない。
少女の放つ斬撃があまりにも鋭いためか、まるで竹自身が斬られたことに気付いていないかのようだった。
「ふぅぅ……」
少女がようやく斬り返し(※左右の袈裟斬りを連続で打ち込む稽古)をやめ、刀をゆっくりと鞘に納める。
最初に倒れていった部分を除いても二メートル近くあったはずの竹は、そのときすでに彼女の腰あたりまでしか残っていなかった。
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