ささやかな光

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「ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください」 必ず警告されるアナウンスとドアの開閉音の重なりを突き破るように車内に滑り込む人がいた。 一人だけ異質な熱気を纏い息を切らせて、冷ややかな周りの目など気にも留めずに吊革に掴まる。 その他大勢の一人の私もちらりと視線を動かすけれど、次の瞬間にはスマートフォンの画面に移動してしまう。 決まった動作でニュースサイトを開いて、するする画面をスクロールさせる。 国際、経済、政治、環境、芸能。 綺麗に区分けされた出来事に一通り驚いたり、悲しんだり、憤ったりする。 でもその感情は薄く脆い。あっためた牛乳に張る膜ぐらいかもしれない。 結局は他人事だと傍観する嫌な自分に気付きながらも瞳と思考を滑らせる。
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