1人が本棚に入れています
本棚に追加
人生は順風満帆、過去も、今も、未来も、満ち足りている。
私はそうでなければならないのだ。いや、実際そう、
しかし、私は迷っている。何を迷っているのか、皆目見当もつかないが、分からない恐怖が時折襲って来る。
私は臆病でとても弱い。嫌なことからは全力で逃げたい。実際今、逃げている。そう、逃げているのだが、何から逃げているのか問われると、困ってしまう。少し遅めの思春期だろうか、
二十歳を目前にした十九の秋、私は逃げて居た。
十九時から約束がある。久しぶりに帰省した私の為の、家族での食事会だ。憂鬱過ぎる。家族が嫌いなわけではない。
母子家庭で育ったこと以外、普通の家庭で、母は私に、充分な愛情を注いだ。
だから、私は幸せだ。
食事会には、母と母方の祖父母、そして母の妹とその配偶者が来る。
みな、私によくしてくれている。私が彼らの言葉を、素直に受け止められないだけ、なのだろう。彼らと話すと、どうしようもない感情でいっぱいになる。
その感情は、おそらく、良いものではない。
おそらく、というのも、私は良いものと悪いものの区別がいつからか分からなくなってしまった。いろんな意味で、流されやすい性質を持っているのだろう。
そんなことを考えているうちに、約束の時間が迫る。時計の針は十八時を過ぎた。
二時間ほど前に、母から連絡があった。暇ならお茶をしないか、というものだ。
私はそれに返信はしていない。別に母が嫌いなわけでもない。母とのお茶が嫌、そうなのだろうか、特段深い意味はないが、他愛もない内容の連絡は、基本無視をしてしまう。
今日、私は友人に会う約束があると嘘を吐いて、家を出た。正確に言うとそんな事は一言も言っていないのだが、
最初のコメントを投稿しよう!