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七星の前には『3001』と書かれた大きな扉がある。これを開ければ夢が叶う。おばあちゃんとの約束が果たされる。
七星はその扉の横にあるインターホンに手をかけた。押せばいい。押せば夢が叶う、約束が果たされる。でもそれでおばあちゃんは喜ぶのか。こんなやり方で夢を叶えて。それにこのまま続ければ体を破壊しかねない。そう思うとインターホンにかけた手を引っ込めて、その場にうずくまった。
でも七星は思った。これしか夢を叶える方法は私にはない。成夫が言うように10年以上もこれにかけてやって来た。でもスターを掴むことはなかった。才能がないのだ。これが私の実力なのだ。だったらこんなやり方でも掴むしかない、スターを。
七星はインターホンに手をかけた。目をつぶりインターホンを押そうすると、色んな人の顔がうかんだ。ファンの人、古村、成夫、おばあちゃん。それで手にかけたインターホンから手を離した。その時、七星のポケットから七星の携帯が落ちた。七星がそれに気づき携帯を救い上げると留守電が入っている。その留守電は成夫からだった。
「七星がニューヨークに来てくれるって言ってすごく嬉しかった。でもいつも違和感が残るんだ。七星と付き合う時もそうだった。七星はファンの人を裏切るじゃないかと悩んでいた。そんな迷子になっている七星を俺は無理矢理引っ張って付き合ったんだ。だって七星は優柔不断で迷うだけ迷って答えを出せないから。だから俺が答えを出させるんだ。でも七星が本当に望んでいないと思うと俺は辛い。俺は自分の気持ちと七星の体を心配して七星にニューヨークに来てほしいと言った。でも七星の心は置いてきぼりだった。だからよく考えて答えを出してほしい。七星の夢は俺の夢でもあるんだから」
七星は心を突かれた。でも答えを見つけた訳ではない。でもただ言えることは越えてはいけないラインがある。
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