スターライトシンドローム

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 七星は売れない地下アイドルだ。毎月2回秋葉原の地下で20人ぐらいの客の前で踊って歌って、その後には握手会ならぬハグ会を行っている。 「ありがとうございま~す。七星をドキドキさせないでぇ~」 七星は汗かきな小太りなファンに抱きついてそんな言葉を発していた。  また違う日には都内のスタジオの一室にて水着を着て、カメラを構えたあの汗かきな小太りの男の前できわどいポーズをとって写真撮影されていた。このカメラを撮っている男は何十万もするような一眼レフカメラを使っているが、別にプロのカメラマンではない。一般人である。  これは撮影会といって、ファンが30分3000円で水着やメイド服やセーラー服などの好きな衣装を着せて撮影できるイベントである。 「いらっしゃいませ。いつもありがとうございます。どの衣装にしますか? 」 色黒で少し体格がいいので、なんかお面だけ変えて体モノマネをしてそうなファンにそう聞くと、そのファンは、 「えへえへ~、じゃあ~メイドさんがいいかなぁ~えへえへ~」 と言いながら、鼻息をたてながら満面の笑みをうかべていた。 「はい、それではメイド服に着替えて来ますね。ご・しゅ・じ・ん・さ・ま」 七星があごの前で両手をグーにして首を傾げながらウィンクしてそう言うとファンは、 「そ・・それはメイド服に着替えてから言ってほしいなぁ~えへえへ~」 またも鼻息をたてながら満面の笑みをうかべて話していた。  これが七星のアイドル活動なのである。某なんたら坂とか、某秋葉原の大人数アイドルのようにクリーンなアイドルではいられない。きわどいようなサービスも必要となってくるのだ。それに年齢も重なってファンの数は減り、サービスも境界線ギリギリのラインをついてきている。
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