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2018年。冬。
「小野崎ぃー。なにしてんの??」
「土方さんのウィキ見てる。」
「え、なんで。そんなの何回も見てんじゃん。」
「いや、これがまた笑えるんだわ。俳句とか可愛いし。見てよ。土方さんが売ってた薬の効能未だに解明されてないの。めっさ笑う。」
「いや、無表情だわ。」
テスト勉強も放り出してスマホをいじる私、小野崎しのぶに話しかけてきたのは、
高校に入ってクラスが離れた今でも交流の絶えない中学からの友達、城田波瑠。
魂のソウルメイトという名のオタ友で、
クラス運の良かった私とは違い、一軍サマに怯える波瑠ちゃんの様子はマジ笑う。
「見て見て土方さん良い男だよ。かっこいいよ。」
「あーーうんそうだね。つうか、前にも沖田総司良い男って言ってなかった?」
「当たり前やがな。皆イケメンだわ。惚れる。」
小6で新選組主題のアニメにハマってから史実を調べ始まった新選組オタク節。
高2になっても健在であり、むしろ悪化している。
「あーーーもうむり、斎藤さんと結婚したい」
「結局誰好きなんだよ。」
「箱推しだバカヤロウ」
「誰がバカだド突き回すぞ。」
「私よりはバカですぅぅぅ」
「くっっっそ!!無駄に良い脳ミソしやがって!!」
早く終わった学校の帰りにカラオケに行こうと待ち合わせた。
いがみ合いながら着々と帰り支度を済ませて下駄箱へと足を進める。
「小野崎は新選組に会えたら性欲爆発しそうだね。」
「ありそうな冗談やめろぃ」
「あるんかい。」
"会えたら"
そんな事を話していたからだろうか。
昇降口の敷居を跨いだ途端、
私達二人を包む世界が、
「…………え」
急変した。
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