真実~相手の身になって考える~

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 だが貴族連中はというと、王や民衆から絶大な支持を得ているシルクス夫妻を抱き込むことができれば、他の貴族たちよりも優位に立てるとし、幾度となくシルクス夫妻に接触し自分たちのもとに引き入れようとあの手この手で勧誘するも、二人が首を縦に振ることはなかった。  そんなことを繰り返していくうちに貴族間の間でシルクス夫妻への不信感が募っていく。  その不信感は「あの二人がどこの勢力にも属さないのはやがて自分たちが貴族へと成り上がり、自分たちを潰すつもりなのだ」という根も葉もない噂へと形を変えていった。  とんでもない話だと思う、二人はただ一国民として最愛の娘と穏やかに暮らしていきたいだけなのにな。  そんな二人の願いとなど知らぬとばかりに、日に日に貴族たちの勧誘は激しさを増していき、やがてそれは脅迫染みたものへと変わっていくだけでなく、自分たちにとって邪魔な存在であるとして二人を排除しようとする貴族まで出てくる始末だった。  それでも二人は貴族たちに屈することはなく、なんとか貴族たちと波風を立てぬようにやり過ごしていた。  だがついにとある貴族が強硬手段に出た。  マグリドの数ある貴族の中でも強硬派と言われる「リドアード家」が二人の元を訪れ――― 「自分たちに属さないのであればいかなる手段をもってしてでも、お前たちを潰してやる」  もう原文まま。捻りも何もない剛速球のストレートもいいとこ。そうはっきりと言い放った。     
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