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とある住宅地に近い、ちょっとした山の中。
一軒の豪邸がたっていた。
植物のつるの装飾の施された背の高い鉄格子に囲まれる、視界に入りきらないほどの広い庭。
赤や白といった薔薇がいくつも植えられていて、それをなれた手つきの庭師がお手入れに励む、なんともほんわかとした風景。
そんな誰もが羨ましがるような庭を見下ろしているのが、真っ白な壁で可愛らしい雰囲気の豪邸。
年老いた、あるウィザードの豪邸だった。
このよく晴れた日中の光に乗って、開け放たれた窓から爽やかな風が吹き込む。
ふわりとレースのカーテンが遊ぶ中、迷い込むのは、これはまたふわふわのゆきの、一粒。
一粒入り込むと、また一粒、そしてまた一粒と続いていく……。
その一粒が、ベッドで外を見詰める真っ白な長い髪で、真っ白な長い髭のおじいさんの、その髭へと迷いこんだ。
おお、天気雨はたまにあるが、天気雪とは珍しい……っと、おじいさんは期待に胸を膨らませ、横のテーブルに置いてあった水晶玉を膝の上にとった。
彼がウィザードだった。国のために生涯を尽くし、そして老いて隠居した。
彼は敵も多かったので身内はこれといって作らなかった。
逆に遠ざけてしまった。そんな彼が余生の楽しみに選んだのがカメラだった。
彼は長年、五台の一眼レフカメラに対して魔力を与え続け兄弟のように育ててきた。
そして、先日そのカメラを世界各地にばらまいたのだ。
一人目は、オランダを旅していた東洋人。
二人目は、アメリカのハリウッドスター。
三人目は、アフリカで化石の発掘調査をしていた教授……には断られ助手。
四人目は、南極を調査していた青年。
五人目は、日本のカメラ好きの女子学生だった。
そのカメラ達は魔力で引かれ合い、最後には一つの場所で出会う。
どんなドラマが待っているのか。彼は楽しみで仕方なかった。
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