よくある古本屋の片隅で

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そして父親は自分ではなく、残される娘を助けて欲しいと願って来たのだ。 真一も母親も、最初は聞く耳を持たなかったそうだ。今更都合のいい話しをと思った事だろう。 しかし、寝床に伏せる母親を見ている内に、真一はその子が気になる様になっていた。 そして一度、会いに行ったそうだ。 当時彼女は十八歳。名前は愛美 (まなみ) と言った。 細っそりとしているが、可愛らしい女の子だとも言っていた。 最後の高校生活の夏休みも、殆どが部屋に寝たきりが続いたらしい。 真一は愛美の体調がいい時に、一度外に連れ出したそうだ。余り遊びにも出たことの無い彼女の為に、街を色々と案内して回った。 私が見たのは、その時の二人だったのだ。 まるで恋人の様だった。 いや、それは仲のいい兄妹だったのだ。
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