よくある古本屋の片隅で

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" 明美へ。 どうか許して欲しい。 馬鹿な僕を許して欲しい。 そして、今でも僕は、君の幸福を願っている。 真一 " 「え!ど、どうして?」私は身体が固まった様に立ち尽くした。 すると奥から店主が来て「あなたでしたか。どうぞ、それをお持ち帰り下さい」と言ってきた。 「え?どうしてこの本がここに」 これはどういう事? 「実はもう十年以上になりますか。ある男性がこの本を購入された際、これをじっと見入っている女性が現れたら、渡してくれないかと頼まれたのです。 何か事情がおありだったのでしょう。 それ以来その本は、あなたが来るのをずっと待っていたのです。では」と店主は微笑んで、また奥に戻って行った。 私は本を両手で、そっと胸に押し付けていた。 馬鹿ね真一は。 もし私がここに来なかったらどうするつもり? これがあなたの選んだ結末なのね。 私もあなたが、きっと幸せだと信じているわ。 さようなら真一。 そして私はその一冊の本を抱えて、店の扉をゆっくり閉めて出て行った。 終わり
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