よくある古本屋の片隅で

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そして夏休みに入る前のある日、まとめて読もうと数冊の本をカウンターに並べた。 すると、そのスタッフの男性が「これ、面白いから読んで見たら」と一冊の本を勧めてくれた。 その彼が真一だったのだ。 確かにその本はグッと来て、すぐに読み終えてしまった。 それからと言うもの、彼にあれこれ教えて貰ったり、ある本の話題で盛り上がったりと、二人の距離は急速に縮まって行った。 そしていつしか、二人は付き合う様になった。 彼は本だけでなく、色んな風景の写真を見るのも好きだった。 「明美、これ見なよ。優雅だろう」とケニアの壮大な風景やエアーズロック、ナイアガラの滝など、様々な写真集を見せてくれた。 「そんなに好きなら行けばいいのに」と私が言うと 「貧乏学生に行ける訳ないだろ?想像するのが丁度いいんだよ」と笑って言っていた。 そしていつしか私も写真の世界に、自分の姿を想像させていたのである。
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