よくある古本屋の片隅で

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真一は母子家庭で育った。 彼が五歳の頃、父親に隠し子が発覚して両親は離婚したそうだ。 酷い父親だったと、真一は話してくれた事がある。 夫婦仲が原因だと言っていたが、隠し子がいたなんて初めて聞いた。 母親は息子の為に、無理をして来たのだろう。 真一が大学に入った頃から、病気しがちになった。 真一は奨学金で大学に通い、バイトをしながらも母親を支えていた。 そんな真一を明美も尊敬していたし、力になりたいとも思っていたものだ。 そして真一が三回生の夏頃、父親から連絡があったと言う。 それも私の知らない事だった。 父親は離婚後、その愛人と娘の三人で暮らしていた。娘は真一の三つ下らしい。 ところが、母子共に病弱な体質がたたり、その母親は五年後に亡くなったそうだ。 病弱な娘を抱えて、父親は面倒を見続けていた。 元々が真一親子を裏切った手前、誰にも助けを乞う事が出来なかったのだろう。 そんな時、父親は医者に末期ガンである事を宣告されたのだ。
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