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「やっぱり、最後はあなただと思った」
生きとし生けるもの全てが呼吸を止め、ただ凍りつくだけの終末世界。
その終わりに、私は今、立ち会おうとしている。
……それが、私の使命だから。
「悲しい顔……」
彼女の顔は、寂寥に満ちていた。
けれど、これまで世界の終わりを撮ってきた私には、その意味がなんとなくわかる気がした。
「あなたは、対等な友人が欲しかった。……そうでしょう? アリス。……この世界を統べる、最後の主人」
私がそう言うと、彼女は初めてこちらを向いた。
その瞬間を、また私はパシャリと撮る。
どこまでも、機械的に。
ただ黙々と、使命をこなす。
……もし、私がアリスの友人として造られた存在なら。
そのように振る舞うのも、またいいかもしれない。
「それは少し、違うわ。……私は、撮りたかったの」
けれど、アリスはそれを否定した。
そして、おもむろに左手で支えながら、首から下げたカメラを構えた。
「この、何もかもが終わる世界で生まれたあなたが、何を得るのか」
その言葉に、私はどんな顔を浮かべただろう。
……初めての感覚だ。
その表情筋の動きに、私は、名前を付けられなかった。
……だってそれは、私が撮ったことのないものだったから。
「……ねぇ、最後に撮っていいかな。この世界に生まれ落ちた最後の命。ーーあなたのことを」
その時の彼女の顔は、この何もかもが凍りつく世界の中で、信じられないほど暖かくて。
……あぁ、私は、このために生きてきたのか。
そう、 思った。
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