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「……」
図書室で落ち合った今日は当然、会話もなくお互いに勉強だった。
もはやこれはデートとは呼べない気がする。いや、レポートを書く時間がないなんて俺がうっかりこぼしたせいで、心優しき真面目な委員長はこの場所を提案してくれたんだが。
おかげでレポートは進むけど、こっちの関係はサッパリだ。あまりの通じなさに溜息がでる。
(どっか遊にいきたい)
俺は腕を伸ばして、委員長のレポート用紙に走り書きした。
「どこに」
委員長は驚いたような顔で問い返した。せっかく筆談にしたのに堂々と声に出すのは、無粋だろう。それに、驚く意味がわからない。恋人同士なら遊びに行きたいって思うのは、当然じゃないのか。
俺は、二人きりになれればどこだってよかった。これみよがしに大きな文字で書く。
(何処でもいい。二人がいい)
「今だって一緒にいるだろう。提出用の課題は終ったのか」
鈍いんだか真面目すぎるんだか、クソつまんない返事が返ってきたので、俺は乱暴に文字を書きなぐった。
(委員長の家、行ってみたい)
「俺の?」
委員長は珍しくはっきりと嫌そうな顔をした。眉がぎゅっと寄ってしかめ面になる。男っぽい顔立ちだから余計に強い拒絶に見える。
(だめ?)
見上げて目で訴えてみたけど、委員長の返事は早かった。
「困る」
モヤモヤした気持ちが黒雲のごとく湧き上がってくる。
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