3話目  歌う声の。

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   和真は大勢といるときより、一人の方がずっと楽に息をしているようにみえる。  二人で暮らすようになって部屋でくつろぐ姿を見ていると、俺まで外で臨戦態勢だった体の強張りがほどけていくような気分になる。  家の中はいつも、安心な巣穴のように、ゆるやかに時間が流れていた。  抱き合う、一緒に寝る、食事をする。  生きていくための基本的で大事なことが、和真との生活には詰まっている。  実家の浅野家では、もらいっ子の呪縛で違和感が消えなかったし、その後、仕事で世界を飛び回っていたときは、自分のことを構っている余裕はなかった。  俺はこれまでずっと、生活するということをすごくおざなりにしていた。  生活というのは、ただ機械的に飯を流し込み、最低限の身支度を整え、疲れたら眠る。それだけのことだと思っていた。  俺たちは寝る前、いつも何気ない話をする。  仕事で会った人のこと、近所の猫、庭で咲いた花のこと、旅の思い出。いつもそれは唐突で、自由だ。  その日は珍しく、和真から話題を振ってきた。 「涼太、今年、クリスマスどうする?」 「クリスマス?」  布団から上半身を起こして、小さな灯りに照らされたベッドサイドのカレンダーを見た。あとひと月もすれば、もうそんな時期になる。 「えーと、オランダに行くのは11月下旬だし、来月はもう海外は入れてない。イベントが国内で何か所かあるけど、全部搬入はクリスマス前には終わるはず。てか、それ用の植物だから終わってないと絶対まずい。だから」 「そう、じゃ当日は一緒に過ごせそうだね」  和真は嬉しそうに笑った。
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