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和真は一緒にいることを積極的にせがんだりしない。
ねだるより我慢を受け入れるタイプだと思う。だからこんな風に、和真の表情で俺はその気持ちを察する。
そういえば、つきあって何年にもなるのに、恋人になってから一緒にその日を過ごしたことはなかった。
「ねえどっか行く? 何か欲しいものある?」
身を乗り出した俺に、和真は枕に頭をつけたまま、やんわり否定した。
「子供の頃、馬鹿正直に答えたら気まずい思いをしたことがあるから、そういうのは、言わないことにしてる」
「なんで! 俺は絶対だいじょうぶだよ! 言いなよ、任せて!」
「なんで聞いてもいないくせに自信満々なの。もう寝るよ」
勢い込んで頼んだけど、和真は笑って相手にしない。俺はそのまま背中を向けて逃げそうになる和真の腕を掴んでぶんぶん振った。
「ねえねえ、いいじゃん教えてよ、何が欲しかったの。言わないと襲うぞ」
「どうせいつも襲ってるじゃない」
和真は冷静につっこんで、俺を手を振り払おうとする。俺はベッドの上で正座になって、和真に頼み込んだ。
「なあ、早く。それ。俺が叶えてやるから」
「無理だよ。ほら、寝る時間過ぎてる」
「聞かなきゃ寝れないって。教えてくんないとマジで襲うからな! 足腰立たなくなるぐらいまで離さないとか、朝までやり倒すとか、和真がもう許してって言うまで攻めまくるとか」
「くだらないことばっか言って……」
和真は腕で目隠しした。形のいい唇はしばらくの間、頑なに閉ざされていたけど、俺が手を離さないから諦めたのか、ようやく口を開いた。
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