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「まあね、涼太は暑がりだからそうなるだろうけど、俺は寒いのは苦手なんだよ」
「知ってる。和真、体温低いしな。けどさ、今までとそこは違うじゃん。ダブルベッドにしてくっついて寝ればいいだろ。俺かなりあったかいぜ?」
「確かに涼太は子供体温だよ。でもそういう問題じゃない」
「なんでさ」
「だって俺はそもそもダブルベッドに反対してる訳だろ。ベッドはシングル二つがいいって」
「それこそどうしてだよ! 和真、俺と寝たくないの?!」
俺はそのあけすけなやり取りにあっけにとられた。
平日の店は空いていて、俺と数人の客がぷらぷらしているだけだったけど、さすがにみんな声の方向を見ている。だってその声の主は二人とも男だったし、内容はどう考えてもカップルそのものだし。そりゃどんな奴か見たくもなるだろう。
で、固まった。
うっわ……これは。
俺は、副業の関係で大概の事には驚かない。そういう訓練がされている。だけど、そのはずの俺ですら痴話げんか中の二人から目が離せなかった。
二人は二十代の前半だろうか。
可愛い感じの顔立ちの中肉中背の男。おそらく彼のほうが『涼太』だ。活発な雰囲気でいかにも明るい。よくクラスの中心にいるリーダータイプで、人懐こそうな瞳がきらきらしてる。
もっともその眼差しは目の前の『和真』しか見ていなかった。
そしてその和真というのが。
俺はその顔をまじまじと見つめた。他の連中もだ。和真が動くたびに周囲の目線まで波のようにさざめく。無遠慮とは思いつつも、そうせざるを得ないほど和真の容姿は際立っていた。
精巧な人形のように目鼻立ちの整った顔は、そのパーツのどれもが品よくおさまっている。アーモンド形の目は星を宿したように黒く光り、スッと通った鼻りょう、濡れたように赤い唇まで、どこをとっても完璧だった。
その和真はうつむきがちになり、長めの前髪を押さえて困ったように理由を説明する。美人の悩ましい姿は官能的ですらある。
「だって涼太は不在がちだろ。寝る時間だって一緒とは限らないし。だったらベットはそれぞれの方が気楽に使えるじゃないか」
「じゃ、せめて俺のだけダブル。とにかく一つはデカくないと!」
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