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「そんなのいいから、もっかいキスしてよ。それだけで俺、無敵になれるよ。守る必要なんかないぐらい」
俺は、委員長をシャツごと引っ張った。
一瞬の躊躇いのあと、再び押し付けられた唇は、すでに欲情がこぼれそうに激しかった。
口腔内に侵入してくる舌先が甘い。望んだ口づけは、吐息ごと俺に触れてきて、いきなり乱暴で、なのに切ないぐらい愛おしくて、それは委員長そのものだった。
委員長の腕は、いつの間にか完全にハンドルから離れて、俺を抱きしめていた。
好きだ。
ぎゅっとしてくれたその腕は、言葉にしなくても確かに、そう言っていた。
自分の卑屈さとか、イジワルさとか、孤独とか、そういう俺の中で巣喰う闇闇しいものが、全部どっかにいって、全部大丈夫って気がしてくる。
委員長がいればもう、俺はもう、それだけでなんだか怖いものなしだった。
魔女の言う通り、委員長の存在は俺を最強にする。
婆さまにガミガミ言われても、弟妹達に睨まれても、終わりなき仕事にも、真っ向から立ち向かえる。
まだ全然かたちになっていない未来の先までも。
きっとこれからも俺は、委員長とキスをするたびに、こんな気持ちになるんだろう。この不器用なぐらい真面目な人を、俺はずっと好きでいるんだろう。
幾つになっても。
どこで抱き合っても。
魔女のように鋭く、確信を持って、俺はそれを予感していた。
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