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自分の腹から下がないことに。
力が抜けて、風呂場の床に横たわる。激しい痛み、掻きむしっても消えそうにない熱さ。急な嘔吐感に襲われて血反吐を吐いた。
「イツキ!」
フレイアが俺の身体を抱き上げた。
「にげろ、ふれいあ」
「イツキを置いては逃げられない」
「そういうわけにも――」
そこまで言いかけた時、フレイアの背後に影を見た。黒い影、間違いない、人の影だった。
しかし、そんな思考も意味がなかった。
フレイアの口から血が溢れてきた。
そうか、逆か。
向こうでは俺がフレイアの立場だった。
「ごめん、な、ふれいあ」
「ええ」
最後の力を振り絞ってフレイアの手を握った。痛いし辛いし、一刻も早くこの状況から開放されたいという気持ちはある。でもそれ以上に、彼女を送り返せるという気持ちの方が少しだけ勝っていた。
目を閉じる。
友人たちの顔に双葉の顔、優帆の顔。そしてフレイアの顔が浮かんで来る。
心の中でもう一度「ごめん」と呟いた。それが、俺の最期だった。
【to the next [actuality point]】
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