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そんな状況を知った世界が、あれだけ騒がれた能力者達を"欠点"持ちと認識するようになるまではそう時間が掛からなかった。
それから世界は段々、能力者達に厳しくなっていった。
能力を理由に虐められることは勿論、学校に入学することさえ拒否されることもあった。能力被害者の会などという組織が生まれ、能力者から人権を奪うべきだと宣う過激派が現れもした。
それでも、研究所へ行けば十分な待遇は得られた。だが、研究所は保健所じゃない。一定人数以上の能力者は求められておらず、常人として生活せざるを得ない能力者達は少なくなかった。
そんな彼らは、自身の持つ能力を正しく"欠点"だと自嘲し、欠点持ちと揶揄されて、それをどうしようもなく受け入れながら人以下の生活を送らされていた。
この街が生まれるまでは。
……。
「君は、音を出せないんだね」
僕がそう音無ちゃんに言えば、彼女の先程までしていた笑顔が硬直した。今までの事がリフレインしたのだろう。これを肯定したときの、仕打ちを。
彼女はマジックペンを取ると、ホワイトボードに文字を書く。初めて、文を書くのに彼女が躊躇う仕草を見せたが、それでも最後まで。
『はい 無声映画 って言われてる欠点です』
彼女はホワイトボードで自分の欠点を打ち明けた。
『私がしたことは全部 音が出ないんです』
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