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試しに、音無ちゃんが手拍子を打った。パァン!という弾ける音が出なかった。
持っていたホワイトボードをマジックペンで叩いた。車内に鳴るのは線路を走る音だけだった。
車内を全速力で走った。それでも、車内は静かだった。
「声が出せないから、ホワイトボードに文字を書いていたんだね」
『ホワイトボードは ママがくれたんです。
一々紙に書いていくのは面倒だろうって これならペンが無くなるまで使えるからって』
ママが好きなのだろう、思いの籠った目でホワイトボードを撫でつつ、音無ちゃんが文を見せた。
……。
『面白いこと話しましょう』
音無ちゃんはそう書くと、欠点持ちの話で暗くなった車内を明るくすべく、テレビであった話やら、面白かった体験などを綴り出した。
僕もこのいたたまれない空気を振り払うべく、彼女に合わせて好きなアニメの話題や、彼女の体験談に相槌などを打って街までの時間を過ごすことにした。
「……しかしあの結末は無いね。今までずっと主人公のことを想っていたヒロインが、最後で脇役と結ばれるってのはどうなのって思うよ」
『わかります!あれは私も見てて「うわぁ」ってなってました!』
「そこは主人公と結ばれろよーって思うよな!」
『なんでぽっと出のキャラに主人公が奪われるんですかね!ヒロインちゃんはあんなにずっと想い続けてましたのに!』
「ほんとそれな!」
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