異常な街

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街はあまり人気がなく、疎らに人影か見える程度に留まっている。彼らも全員欠点持ちなのだろうか、そう考えると不思議な感覚に陥る。 『ここに居る皆が欠点持ちだと思うと 親近感よりも先に変な気分になりますね』 どうやら音無ちゃんも同じ気分になっているらしい。彼女が器用に片手だけでホワイトボードに文字を書いて見せる。 「多分、同じ人を街以外で見たことがないから、第三者目線で欠点持ちを……自分とも言える存在を見るのに慣れてないのかもね。 ……周りからはああ見えていたのかって」 『なるほど』 冬がまだ感じられるとはいえ、もう春だと言うのに季節違いな程に厚着をして歩く人が居た。かと思えば貯水タンクをキャリーに乗せ、ずっと水分補給をしながら急ぎ足で何処かへ向かう人も居た。 音無ちゃんは首から下げていたホワイトボードを眺めると、それからなんとも言えない瞳で彼らを見つめた。 『奇異なんですね 私も』 何処かで、自分のことを一般人だと思って生きている。それは欠点持ちの誰しもが、心の奥底で必ず持っているものだ。それが、こうやって別の欠点持ちを見ることで剥がされていく。 不思議な感覚の正体は、字面だけで知った風に思っていた欠点持ちという言葉の、真からの理解なのだろう。
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