異常な街

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7階に着くと、僕達は部屋の扉の前に誰かが居るのを見た。 「おや、音無様。それと……月見里様。長旅ご苦労様です」 そこにいたのは、僕達に地図を渡してくれた、黒服を纏った真面目そうな雰囲気の男性だった。彼は一礼すると、茶色の手帳を確認しながらそう言葉を紡いだ。 「宅配なされたお荷物は全て部屋に置いております。誠に勝手ながら、家具などは予め此方で設置、必要そうなものは此方で手配しておきました」 どうやら、報告のために僕達の到着を待ってくれていたらしい。音無ちゃんがホワイトボードに文字を書く。 『ありがとうございます』 「いえいえ、此方の都合で引っ越しをさせられたのですから、これくらい当然のことで御座います。 それと、お二人様」 「はい、何でしょう」 おや、何だろうか。男性は手帳を片手に僕を見た。 「大変恐縮なのですが、明日の午後2時に塔へお立ち寄り下さいませ。 一応、塔の場所は地図に載っておりますが、もし宜しければ後程にルートの書き込んだ地図データをメールで送信しても構わないでしょうか?」 「あ、お願いします」 『わたしも 欲しいです』 どうやら呼び出しの用件もあったらしい。塔と言えば……ここに着くまでの道で夕焼けをバックにしていたあの塔だろうか。 少し遠く迷いそうだったので、その厚意に甘えることにした。 「了解致しました。では、お二人様、これにて失礼させて頂きます」 男性が出会ったときのように頭を下げると、エレベーターへ乗り込み、そしてエレベーターは閉まっていった。姿が見えなくなるまで、音無ちゃんは男性に手を振って見送っていた。 「……にしても、塔か。なにするんだろうね」 『実験ですかね?』 何気無く書かれた音無ちゃんの言葉に、それが十分あり得そうだと笑って返した。
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