異常な街

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……。 あの後、僕達はそれぞれの部屋へと入り、手持ちを片付けてから702号室……つまりは僕の部屋に集まることを約束した。 僕自身は手荷物も届けてくれた荷物も少なかったが、音無ちゃんの方は色々届けてもらったらしく、少し整理に時間が掛かるらしい。 僕は届けられた荷物をさっさと片付けていくと、残った時間で夜ご飯を作る為にキッチンに立った。音無ちゃんが来るまでに間に合わせたい。 「……いつまでかな」 僕は包丁を握って、ふとそんな事を呟いた。 ……。 ……。 ぴーっ♪ぴーっ♪ぴーっ♪ 音無ちゃんからの着信音が僕の携帯に響く。どうやらもう玄関の前にいるらしい。 チャイムを鳴らしたり、ノックをしても音を出せない音無ちゃんに、扉の前に居るときはメールするよう僕の方から予め決めておいたのだ。 僕はそそくさと机に夜ご飯の盛り付けられた食器を並べると、扉を開けに玄関へ向かった。 『お邪魔します』 玄関の前で彼女が笑顔で佇んでいる。手に持つホワイトボードには、可愛らしいまるっこい文字でそう書かれていた。 「上がって、もう夜ご飯も準備できてるよ」 『やまなしさんの料理 楽しみです』 「家事が得意とはいえ所詮男の料理だからね、あんまり期待しないで」 お風呂に入ってきたのだろう、音無ちゃんが横を通るときにふんわりとシャンプーの香りがした。服装も寝間着に着替えたらしく、ゆとりのあるふわふわとした物に変わっている。
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