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……。
『すっごくおいしかったです!また食べに来ても宜しいですか?』
「喜んでもらえて嬉しいよ。それに、明日の夜も音無ちゃんの分まで作るつもりだから、是非食べにおいで」
『はい!』
食事が終わり、食卓には空の皿が置かれている。音無ちゃんは意外と良く食べる子だったらしく、ご飯と肉じゃがを2回もおかわりしてくれた。
今は空になった皿を片付けて、一つ一つ洗っている最中だ。音無ちゃんは流し台の対面にあるカウンターに座って、僕が皿洗いをする様子を見ながらホワイトボードを掲げている。
『塔は結構遠い場所にあるみたいですね』
音無ちゃんが、スマホを見ながらそう書く。どうやら黒服の男性から送られた地図を見ているらしい。
『研究は大げさとしても、何かしらの検査はするんでしょうか』
あまり気が乗りません、というような顔で音無ちゃんはしゅんとした顔を見せる。
「大丈夫だよ、ここには欠点持ちを理由にして酷いことするような奴は居ないさ」
『分かってはいるんですけどね』
僕がそう助言してみるが、どうやら音無ちゃんはそれだけでは納得できないらしい。はぁ、と溜め息をつく。その溜め息も能力によって聞こえないが。
無理もないだろう。まだここに来て一日も経っていないのだから、まだまだ外での出来事の方が経験としては遥かに多いのだ。
ここでなら差別されることがないと口で理解していても、心がそれで納得してくれるわけがない。
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