3人が本棚に入れています
本棚に追加
昔、人々は皆同じ言葉を話した。彼らは一ヶ所に集まって、平凡な毎日を過ごしていた。
神は、そんな人が一部にしか存在しないという状況を憂慮し、人々に世界に散らばるよう命じた。
だが、離れ離れになることを良しとしなかった人々は、神の命令に背き、大きな街と天を突くような高い塔を作ることを計画した。
大きな街で人を留め、高い塔で迷わないようにするために。
神は何時までも命令を聞かない人々にしびれを切らし、地に降りると、建築されていく塔を見てこう言った。
「彼らが団結する限り、全ての困難はこの塔のように叶うだろう。私の命令をも、このまま行けば彼らは背くことができてしまうだろう。
彼らが私の命令に背いてしまうのは、彼らの言葉が同じだからだ。同じだから彼らは団結できてしまう。
ならば、彼らの言葉を乱し、互いに通じ合わないようにしよう」
そうして言葉を通じ合わせられなくなった人々は、大きな街を作ることも、天を突くような高い塔を作ることも諦めた。
そして、神の命令どうりに彼らは各地に散らばっていった。結果、人々の居た跡地に残ったのは、残骸の街と、作りかけのバベルの塔だけであった。
……。
バベルの塔とは、実現不可能な事に挑戦することを意味する……という訳ではない。少なくとも我々があの塔を"バベル"と呼ぶのは━━
最初のコメントを投稿しよう!