白い塔

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昔、人々は皆同じ言葉を話した。彼らは一ヶ所に集まって、平凡な毎日を過ごしていた。 神は、そんな人が一部にしか存在しないという状況を憂慮し、人々に世界に散らばるよう命じた。 だが、離れ離れになることを良しとしなかった人々は、神の命令に背き、大きな街と天を突くような高い塔を作ることを計画した。 大きな街で人を留め、高い塔で迷わないようにするために。 神は何時までも命令を聞かない人々にしびれを切らし、地に降りると、建築されていく塔を見てこう言った。 「彼らが団結する限り、全ての困難はこの塔のように叶うだろう。私の命令をも、このまま行けば彼らは背くことができてしまうだろう。 彼らが私の命令に背いてしまうのは、彼らの言葉が同じだからだ。同じだから彼らは団結できてしまう。 ならば、彼らの言葉を乱し、互いに通じ合わないようにしよう」 そうして言葉を通じ合わせられなくなった人々は、大きな街を作ることも、天を突くような高い塔を作ることも諦めた。 そして、神の命令どうりに彼らは各地に散らばっていった。結果、人々の居た跡地に残ったのは、残骸の街と、作りかけのバベルの塔だけであった。 ……。 バベルの塔とは、実現不可能な事に挑戦することを意味する……という訳ではない。少なくとも我々があの塔を"バベル"と呼ぶのは━━
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