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自動ドアが開いて、僕達二人はマンションを出た。
来たときとは違って、景色は何処か生き生きとしているように見える。青空はこの街でも変わらず広がっており、人々の生活の気配が満ちている。
ちょんちょん、と僕の裾が引っ張られて振り返る。案の定、音無ちゃんがホワイトボードを掲げていた。
『朝でも人は少ないんですね』
「この街は大きさに対して人口が少ないのかもしれないね。……じゃ、散歩しよっか」
音無ちゃんがこくりと頷くと、僕が差し伸べた手をぎゅっと握った。子供特有の体温の熱さを感じながら、僕達は散策を開始した。
……。
街は至って普通の様相であった。職場へと急ぐ会社員らしき人が居たり、コンビニやスーパーが普通に存在している。時折、ガスマスクを着けている人が居たり、浮遊している人が居たりするが、それ以外に変わったことはない。
最寄りのスーパーを確認したり、音無ちゃんと僕が今年から通うことになる学校を見に行ったりもする。まだ学校は春休みだ。勿論、校内に人間は居ない。
『先生も欠点持ちなんですかね?』
校門から街の規模相応に小さな学校の校庭を見つつ、音無ちゃんがそう書かれたホワイトボードを掲げた。
「多分ね……去年、欠点持ちなのが知られて退職した先生が居たってニュースがあったし、その人がここに来てるかも知れないね」
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