異常な街

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たった二人の客を乗せた電車の中で、引っ越しを薦めてきた人物から貰った地図を開く。 そこにはご丁寧に道程を赤ペンで引かれており、一目で何処を通れば良いかがすぐに分かるようになっていた。 どの駅で降りるのか、右折左折での目印になる建物の名前まで、その人物の真面目さの分かる綺麗な字で地図に記されているため、道を間違えることはなさそうだ。 ……。 電車が駅を見付けては止まり、その度に人の往来が発生する。 最初は出る人も乗る人も同じ数で、座る僕のスペースは少し狭苦しい程度には人が乗っていた。 けれど、駅を跨ぐ度に出る人の数は増えていき、乗る人の数は減っていく。 駅を追う毎に視界に映る人の数が少しずつまばらになって、段々と僕の座るスペースがゆったりとしたものに変わっていった。 都会から田舎へと向かっているからだろう。 見える景色に自然が増え始める頃には、車両には僕以外の人影が見当たらなくなっていた。
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