異常な街

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誰も居ない、ガタンゴトンと線路を走る音だけがする車内。 ただ電車は揺れ、車窓が揺れ、心が揺れる。 これは、人気のない車内を見てノスタルジックな気持ちになり、段々寂しくなって家に帰りたくなった……という訳ではない。むしろ逆で、自分が思っていた以上にあの家に思い入れが無いことに衝撃を受けて揺れていただけだ。 ……我が家は語ることも無いほどつまらない三人家族だった、と思う。少なくとも両親が共働きで、そのお陰でお金にはまったく苦労しない家だった。理由さえあるのなら親は僕に簡単に金を渡してくれた。 ただ他の家族より少ないと実感できるのは、家族としての接点の薄さだろう。 父はしょっちゅう単身赴任で家に帰らなかったし、母は仕事ができても家事は不得手な仕事人間だった。その為に、僕の記憶上、家族団欒というのは一度もなかったように思う。 僕が家に思い入れが無いのは、そもそも家族として接した期間が希薄に過ぎるのが大きいのだろう。 今頃、僕が掃除をしないことによって家が埃だらけになることに二人して慌てているんだろうな……と、その程度にしか感じない。
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