第一章、退学

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「さて、どうやって謝らせてやろうかなぁ…… 土下座させようかな?」 坊君は既に勝ちを確信し、ザーブルにどうやって謝らせようかを考えていた。邪笑といえる程の下衆のような笑みを浮かべる姿は暴君そのもの。 坊君と暴君(ティラノ)はお似合いのコンビと言えた。 眼鏡のオールバックの優男がザーブルに問いかける。 「もう降参した方がいいんじゃないかな? 今なら軽く謝るだけで許してくれるように話してあげるよ?」 「HET《いやだ》!」 「え? NOってことかい?」 「僕は悪くない! ぶつかって謝らないあいつが悪いのになんで謝らなきゃいけないんだ! こんな訳の分からないことで決められたくない!」 「ザーブルくぅん? この学校はこれがルールなんだよ? これ以上君のパートナーを傷つけたくないだろ? リタイアして謝るんだ」 ザーブルは奥歯を噛み締め、苦虫を噛み潰したような顔をした。ザーブルは心の奥底から悔しがっているのである。この人生で一番の屈辱と言えた。 この光景を見ていた竜桜はスッと立ち上がり、何処かに去って行った。 ジュラは見てられないと思いつつも、最後まで見なきゃいけないと言う使命感を覚え、顔を手で覆いながらティラノサウルスによるアロサウルスが蹂躙される姿を眺め続けていた。 ジュラがいる客席の更に上には、ガラス張りのVIP席があった。 そのVIP席には先程つまらない長話をしていた氷河校長が直立不動で恐竜バトルを眺めていた。その横には髪をお団子状に纏めインテリメガネを掛けた美人秘書がいた。 「あの、校長? あれ止めなくていいのでしょうか?」 「何故止める必要があるのかね?」 「い、いえ…… さすがにいじめに近いのでは」 「恐竜バトルで白黒ハッキリさせるのは彼らが決めたことだよ? 教師である我々がああだこうだ言う必要はない。それにここに限らずこの世は弱肉強食、あの程度の不条理など社会に出ればよくある事じゃないか?」 二人がこうして話す間にもティラノサウルスによるアロサウルスへの蹂躙は続けられた。本来なら単なる残虐ショウに過ぎないのだが、イマジネーションピッケルによって具現化された恐竜は血も流さないし、内臓も出ないために見ている方からすれば一方的に殴られる格闘ゲームを見ているような感覚にしかならなかった。 アロサウルスは倒れながらも爪を動かすことをやめない。まだ諦めずに爪の一振りを当てようとしているのだろう。しかし、何度も繰り返されるティラノサウルスの四股によって確実に体力は奪われていた。
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