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「君、名前は? 俺は白亜竜桜って言うんだけど」
「三畳ザーブル(さんじょう)、宜しく」
竜桜はじっとザーブルを見回した。銀髪碧眼の整った顔に真白い肌に長い足、日本人の自分から見れば妖精か何かかと思うぐらいに見目麗しく美しかった。
「ところで、三畳くんはどうして俺のお世話を?」
「ルームメイトだから」
「ルームメイト? 二人部屋なんだ俺たち」
「僕は一人部屋を希望した。だけど通らなかった」
二人はこれから三年間を一緒に過ごす部屋に着いた。八畳程の部屋の両脇に机とベッドとテレビが左右対称のシンメトリー状に置かれていた。
「えっと、これから三年間宜しくね」
「宜しく」
そう言ってザーブルは自分の机に座り本を読み始めた。竜桜はザーブルをごく僅かな短い時間の付き合いながらに「無愛想な子だなぁ」と言う印象しか持てなかった。とは言え、お互いのことを知らないと始まらないと思った竜桜は積極的に会話を試みるのだった。
「えっと、ザーブルくんはどこの国の人かな? 凄いカッコいいし、どっかの国とのハーフかな?」
「ロシア」
「へー。ロシアと日本のハーフなんだ? お父さんとお母さんのどっちがロシアの人?」
「そんなこと知ってどうする。僕は君に自分のことを話すぐらいに仲良くなる気はない」
何だこいつ。いきなり仲良くなりたくない宣言をされて竜桜は面食らった。しかし、三年間は嫌でも一緒にいなきゃいけないのだから、ここで引くわけにはいかない。
「つれないなぁ」
「つれなくて結構」
「日本語、超上手いけど暮らしてるのはこっちなの?」
「別に、こっちに来るから学んだだけ」
「どれくらい勉強したの? 訛りも何もないけど」
「人の中にズケズケと入ってくるな。鬱陶しい」
取り付く島もない。竜桜はこの十ニ年間で色々な人間と付き合っては来たが、ここまで激しい拒絶の態度を取られたのは初めてであった。
ザーブルは突然椅子から立ち上がった。引き出しから布テープを出し、部屋の半分に境界線を敷き始めた。
「僕は他人に干渉されるのが大嫌いだ。だから白亜くんはここから入ってくるなよ」
「そんな! この部屋半分じゃ狭すぎるよ!」
「日本人は起きて半畳寝て一畳と聞いている。半分あれば十分だろう」
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