第一章、退学

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ジュラが竜桜に尋ねるが、竜桜の方も知らずに答えることが出来ずに首を横に振った。ちなみに今年の恐竜学苑の新入生は500名丁度である。 恐竜学苑全体の生徒数は約3000名程であり、その大半が恐竜関連の仕事に進んでいく。 「これだけ恐竜好きの仲間がいるんだ…… 俺、超嬉しいよ……」 竜桜が恐竜好きになってからと言うものの、正直な話、友人達からは距離を置かれるようになっていた。友人達は12歳にもなって子供のように恐竜の話をする竜桜を鬱陶しがるようになっていたのである。「いつまでも子供みたいに恐竜恐竜うるさいよ」と言われ、取っ組み合いの喧嘩になることもあった。 つまり、竜桜の周りは恐竜好きを卒業した者ばかりである。 それ故に竜桜は恐竜の話が出来る友達を渇望していた。ここであれば全員が全員恐竜好きなのは間違いない。早く恐竜の話が出来るような友達が欲しいと思っていたのだ。 暫くジュラと話をしていると、急に場の様子がおかしくなった。 上級生と新入生が喧嘩を始めたと言う話が竜桜の耳に入ってきた。 「こんな入学式の日にどこの馬鹿だよ……」 竜桜は呆れながらその喧嘩が行われている先に向かった。 中学生にしては体格の良い男が新入生の胸ぐらを掴んでいた。胸ぐらを掴まれていたのはザーブルであった。ザーブルは胸ぐらを掴まれていても表情一つ変えずに体格の良い男の目をしっかりと見続けていた。 「どうしたの?」 竜桜は人混みを掻き分け、最前列でそれを見ていた同じ新入生に訪ねた。 彼の口から語られる喧嘩の原因はあまりに下らないものであった。 「なんかねぇ、肩がぶつかったとかで因縁ふっかけられてるみたいだよ?」 本当に下らない。しかし、その肩がぶつかったぶつからないで人死にが起こる昨今、これすらも放っといてはいけない事態である。 「肩がぶつかって謝りもしないとはどういうことだ」 こうして凄むのは寺野坊君(てらの ぼうくん)。元々は寺生まれで住職になる予定だったが、檀家の急激な減少により、寺だけでは食べてはいけないと言うことで中学校進学を機に、副業として恐竜関連の仕事に就く為に恐竜学苑に入学したのだった。 彼は東尋坊の語源となった「東尋坊の坊主」のような荒い気性の持ち主であった為に学校内での素行はあまり良い方ではない。
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