第一章、退学

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坊君はイマジネーションピッケルを思い切り地面に突いた。すると、地面に大きなヒビが入り、その中より茶色く巨大なティラノサウルスが現れた。 ティラノサウルスはその姿を現すなりに猛獣類の雄叫びをいくつも合わせたようなこの世の物とは思えないようなおぞましい雄叫びを上げた。 それを聞いていた何も知らない新入生達は咄嗟に耳を塞ぎにかかる。 「これが俺のティラノサウルスだ。テメーもアロサウルスを出せよ」 「え…… 出せって言われても」 その時、いつの間にかザーブルの横に立っていた眼鏡を掛けたオールバックの優男が耳打ちをした。 「いいかい? 出てこい出てこいって思いながら地面を思いっきり突くんだ。これだけで君が昨日始めて発掘した恐竜が出てくる」 ザーブルは言葉の通りに「出てこい出てこい」と思いながら地面を突いた。 すると、大地が大きく裂け、そこから昨日掘り出したアロサウルスが現れた。 「よし、出たね。あ、そうだ君の名前は?」 「三畳ザーブル」 「ロシア語で竜、三畳紀の竜か。いい名前だね」 こう言うと、眼鏡を掛けたオールバックの優男は体育館の中央に歩いて行った。そして優男とは思えないぐらいの大声で叫びだした。 「恐竜学苑の皆様方! お待ちかねの恐竜バトルが開始されます! 今回のマッチングは! まずは3年生紹介! その名もティラノサウルスと同じ名を持つ暴君! これまでもこの暴君を使っての恐竜バトルは不敗! 暴君ティラノサウルスを使った残虐バトルはぁ! 彼にどこまで勝利の星を与え続けるのか! 体長13メートルぅ! 体重5000キロぉ! その大きさ! 肉食恐竜ではトップクラス! 恐竜学苑に現れてしまった狂える暴君! 寺野坊君!」 見学用の客席に座っていた2年生3年生の歓声が体育館中に響き渡る。それを五月蝿く感じたのか呼応したのかは分からないが、坊君のティラノサウルスが再び雄叫びを上げた。 「続いて、1年生紹介ぃぃぃ! 無謀にも! 無謀にも! 昨日掘り出したばかりのアロサウルスをバトルに参加させる羽目にになってしまった不幸な新入生! アロサウルスの力は歴戦の坊君を超えるに至るか! 体長8メートルッ! 体重2000キロぉ! 恐竜学苑に輝くルーキーはこの戦いをどう乗り超えるのか!? 三畳ザーブル!」 格闘技の選手紹介のような小気味のいい口調で二人の紹介が行われた。 「え? 何これ? 今から恐竜プロレスでもやるの?」
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