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ジュラが周りの生徒に尋ねて回るが、今から行われることを分かっている人間は誰ひとりとしていなかった。何が何だか分からないため、配布されたばかりの電子生徒手帳に何か書かれていないかの検索をかけた。
「あった! 恐竜バトル!」
ジュラは恐竜バトルについて読み上げた。
恐竜バトル。その名の通り恐竜と恐竜が戦うことである。
これが始まったのは、化石を生きていた時代そのままに蘇らせる技術が完成された頃だった。
事の発端はパキケファロサウルスの研究をしていた恐竜学者である。
「こいつら、本当に頭をぶつけ合って戦ってたのかな?」
パキケファロサウルスは過去の学説においては頭頂部をぶつけ合って雌争いや縄張り争いをしていたとされていた。
だが、最近になって首の骨が折れた化石が見つかってないことや肋骨の折れた化石が発見されたことから、頭頂部をぶつけ合って戦っていたと言う説は否定された。だが、直接見ていない故に否定をすることも出来ない。
そこで化石を生きていたままの時代の姿にする技術の出番である。試しに別個体二匹のパキケファロサウルスの化石を蘇らせ対峙させてみたところ、頭頂部をぶつけ合うような戦い方はせずに肩と肩をぶつけ合う戦いをした。
そのことから頭頂部をぶつけ合う戦いをしていたと言う説は否定されたのだった。
「この技術を使えば恐竜同士がどうやって戦いをしていたか分かるぞ!」
恐竜学者達はこぞって化石を蘇らせ恐竜同士を戦わせた。
その結果、恐竜の研究は爆発的に進んだのである。
いつしか恐竜学苑では、この技術を使い恐竜同士を戦わせることが生徒たちの間で常態化し「恐竜バトル」と名付けられ格闘競技化していたのだった。
今日では「何か文句があるなら恐竜バトルで語れ!」をスローガンとするようになり、生徒会予算の承認、発掘の場所取りと言った重要なことから、今回のようなちょっとした喧嘩や、給食の花見の場所取りと言った極めて下らないことまで恐竜バトルで決めるようになっていた。
男子の多くはこの手の戦いが好きなのかこの「恐竜バトル」を好意的に受け止めているのだが、冷静な女子からは、このような男子達を「バトル脳」と言って半ば馬鹿にしているのであった。
バトルを行う前には「恐竜バトル! ファイト!」の合図を行うことが絶対とされている。
「ようは…… 恐竜間を戦わせる研究成果が生徒間のスポーツになって、何もかもを恐竜バトルで決めるって事になった訳ね…… バカバカしい。ねぇ竜桜?」
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